つれづれじぐま

産業カウンセラーのこと、社労士のこと、日常のこと等をなんとなく書き綴ります。

時を越えて新しく6

奉納式に帰還した少しの暇に、我がアレキサンドリア自慢の図書館へと足を運ぶ。

初代様は無類の本狂いだったと伝わり、ディッターにより得たこの領地を図書館都市としたと歴史に伝わる。

わずか400年前のことではあるが、その間に天変地異によるものや、国中での魔力が霧散する異常により、この図書館も災

禍にあい、全ての書物は残っていない。魔力不足による影響で保存魔法が解けた植物紙の書物は儚くもちりぢりに溶けたと聞く。

残っている書物は、アウブの図書館や平民が書き写したものが残っていた等、400年の間に少しずつ変わっている可能性のあるものだ。

その初代様の偉人伝は筆頭文官のハートムーンなるものとクリスティーナが主として書き残したものだ。

夜空色のきらきら輝く髪に、月のような金色の瞳。エーレンフェストの上級貴族の娘だったが、エーレンフェストの聖女の実績と魔力量を認められ、領主の養女となり、国境門からやってきた外敵から叔父にあたる後のアウブ配フェルディナンドを助けるために本物のディッターを起こし、勝利しアレキサンドリアを建領した。その時はまだ成人していない未成年の少女だったという。別名、女神の化身。英知の女神の再来との呼び声高く、その身に神を降ろしただかその演出だとかの論争を呼んでいる。今でこそ当たり前に使っている、植物紙を作り、印刷という技術を授け、料理をおいしくし、数多の事業を興したと伝えられている。現在の当たり前の発祥の多くは初代様ではないかと言われている程だ。

伝承に残る風貌、無類の本狂い、聖女の呼び声、ローゼマイン。あまりに似すぎている。この歴史、初代様の恋物語を読んだと言っていたか。アレキサンドリアの興味を引くために、演じているのではないか?と疑いたくなるほどだ。

しかしあの祝福の量。気配すら気づかない本に向かう集中力。本を読む幸せそうな横顔。すべて作り物ではできないであろうか・・・

初代様も出身はエーレンフェストだ。領主一族か上級貴族の娘であるなら、初代様に近い血筋の者なのかもしれないな。

貴族院に戻る頃にはもう少し情報も集まっているであろう。帰領してまでも見かけるだけの少女を気にしている自分をおかしく思いながら、アレキサンドリア恋物語を閉じた。初代様と初代アウブ配の物語は自分には無関係だと。